肩越しの誘惑と、静けさの間

自然の中の彼

ふいに肩越しから振り返られると、

その視線だけで、すこし息が詰まる。

静かな森の中。

何も言わず、何も求めないまなざしが

かえってこちらを惑わせる。

彼は、ただそこに立っている。

上半身裸で、短パンだけをはいて。

自然光に照らされながら、視線の向こうで呼吸しているだけ。

だけど、それだけで十分だった。

首筋から背中へとつながるライン。

肩の丸み。斜めに走る筋肉のかたち。

そして──

振り返ったときの、その目のやわらかさ。

距離はあるのに、近い。

声は聞こえないのに、伝わる。

この森の中で、彼は存在している。

まるで、見られるためだけに生まれてきたかのように。

ずっと見ていたいと思った。

でも、ずっと見ていたら、きっと壊れてしまいそうだった。

肩越しの誘惑と、静けさの間に、

ほんの少しだけ、心が揺れた。

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