高層ビルの屋上。
吹き抜ける風に、シャツ一枚もない彼の肌がさらされている。
それでも彼は、動じない。
空と肌のあいだを通り抜ける風さえも、
彼を見つめる者のひとつに思えてくる。
白いショーツが、光を返している。
肩を張るでもなく、胸を見せつけるでもなく、
彼はただそこにいる。
その腰にかかる布がずれて、ちらりとインナーが覗くとき、
無意識の視線が止まる。
タオルを整えるしぐさで、
指の動きにすら意味が宿る。
誰もいない屋上に、
“見られる”という存在感だけが、
静かに残っている。
青空がまぶしいのに、
なぜか彼の影ばかりを見ていた。
風が通り抜けていったあと、
その背中が、少しだけ遠くなった気がした
コメント